真冬の蛍-後編-

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昨日のいざこざのせいで敵意やそれなりの嫌味は覚悟していったけど案外どこの家でもすんなりと藁をわけてくれた。 「皆さん意外と協力的でしたね」 「あのジーサンがなんか言ったんだろ。それよりお前、前見えてんのか?」 もっさりとした藁を腕いっぱいに抱えているせいで正直ぜんぜん見えてない。 「や、あんま見えてないっすけど……このくらい役に立たないと今回の俺寝てるだけになっちゃうんで」 すると藁の向こうからため息が聞こえる。 お、なんか言われるか? 「ったく……」 身構えたところで藁の向こうから悠一さんの顔が覗く。 「半分」 「あ、ちょっと……」 あっという間に半分以上の藁が奪われ視界が広がる。 「俺、持てますよ」 「うるせぇ。ガキはおとなしく年上に甘えてりゃいいんだ」 「またそうやってガキって言う……」 別に聞こえるように言ったとかそういうわけじゃなかったんだけど、前を歩いてる誰かさんの耳にはバッチリ届いてしまったようで。
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