真冬の蛍-後編-

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腕を強く引かれぎゅうっと抱きしめられる。 そんなふうに言われたらイエス以外返し用がないじゃんか。 「すみません、でした……」 怒られてるのに、心配してくれたことが嬉しいと思ってしまってる俺は少し、いやかなりやばいかもしれない。 その答えに満足したのかポンポンと頭をなで、雅人さんのところへ戻っていく悠一さん。 「恭弥!雅人さんを宿まで運ぶから肩を貸してくれ」 「あ、はい!」 翔さんに呼ばれ行こうとして、一瞬立ち止まる。 振り返った湖はゆらゆらと穏やかに波打ち、最初に見た時とはまるで別物かのように優しい自然だった。 この村はこれからきっと変われるはずだ。 いくつもの悲しみと犠牲があったけど、それでもみんなちゃんと前を向いて立っていられてる。 蛍のような小さな光だって、たくさん集まれば何かを照らし出すことが出来るんだ。 真理子さん、 あなたの望みが実現するまで、もうしばらく見守っていてあげてくださいね。
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