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「そんなことないと思いますよ」
「え?」
信号で動きを止めた車。
潤んだ双眼が俺を捉える。
「その子は悠季さんといる時間が楽しかったと思います。少なくとも嫌だったら自分から来るのやめますよ」
「……ありがとう、恭弥クン」
タイミングを見計らったかのように前の車が動き出す。
滑るように動き出す車の流れに合わせて静かな振動が伝わってくる。
「この踏切よ」
車を停めて5分程歩いたところにあった踏切。
周りには特に何も無い、素朴な感じの踏切だ。
「おい、なんか見えるか?」
「いえ、特には……っ!?」
踏切内を見て、周りを見渡し、もう1度踏切に目を向けた瞬間。
ゆらりと揺らめく蜃気楼のようにセーラー服姿の後ろ姿が踏切前に立っていた。
「いました。ポニーテールに紺色のセーラー服の女の子」
「っ!その子よ、やっぱりまだ……」
するとその子は突然踏切の向こう側へ走り出した。
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