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「あ……待って!!」
呼び止めなきゃ、次いつ出てきてくれるか分からないから。
そう思って彼女を追いかける。
「恭弥!!!」
「う、わっ……!?」
悠一さんの叫び声と同時に勢いよく後ろに引っ張られる。
そのままの勢いで尻餅をついてひっくり返る。
痛い、ズボン穴あく。
悠一さんに文句を言おうと顔をあげた瞬間。
「っ、……嘘、だろ……」
俺の声をかき消すような轟音と共に目の前を電車が通り過ぎる。
「……なんで、遮断機、いつから……」
やっと声が出せたのは目の前ではためいていた悠一さんの白衣が再び重力に従って下を向いた頃。
「お前が走り出した時にはもう下りてた」
「そんな……」
「恭弥クン!大丈夫!?」
駆け寄ってきた悠季さんが俺の隣にしゃがみこむ。
「手、擦りむいてる。悠一、とりあえず私の家行こう」
「あぁ」
遮断機が上がった踏切の向こうにはもう彼女はいなかった。
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