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「そういえば……」
思い出したように顔をあげる悠季さん。
「彼女、最初は音大に行くって言ってたんだけど……亡くなる少し前に音大は辞めたって言ってたわ」
「音大?」
「彼女、歌がすごく上手くてね。私もバイオリンを少しできるんだけど、空き地で2人で演奏したりしたこともあったの」
「どうして辞めたんですか?」
「聞かなかった……ううん、聞けなかったの。彼女の傷に触れてしまう気がして。でも、もしかしたらそれが……」
彼女の死の理由かもしれない、ってことか。
「調べましょう」
「え?」
「それが彼女を縛っている理由なら取り除いてあげましょう。俺たちの力で」
「でも……」
「いいですよね!悠一さん」
不安げに悠一さんを見つめる悠季さん。
はぁ、というため息がひとつ。
「調査代は払ってもらうからな。悠季」
「悠一……ありがとう」
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