始まりは唐突に

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「ただいまー」 返事がない部屋にただ俺の声が消えていく。 だからって特に何も思わないけど。 一人暮らし2年目にもなればいい加減慣れる。 「くっそ濃かった……」 今日1日でいろいろありすぎて頭がパンクしそうだ。 すごく怖い思いもした。 だけど、 もしかしたらあの人達が変えてくれるかもしれない。 怖がって、逃げて、関わることのなかった俺を。 俺の世界を広げてくれるかもしれない。 なんて思うと少しだけ楽しみになる。 お風呂の湯を張っている間にリビングでソファに沈んでいるとカタンと玄関から音がする。 「ん?郵便か?」 玄関まで行って郵便受けを覗くと見慣れない住所の書かれた封筒が1つ。 糊付けされたそれを開くと中から千円札が1枚と "ありがとう" そう書かれたメモ用紙が入っていた。 そのメモの文字を眺めていると自然と頬が緩んでしまう。 ほら、お人好しも悪くない。
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