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「私は、圭ちゃんがいなくなったとき、由梨がこうしてずっっと、抱きしめてくれてたの忘れてないよ。大丈夫、大丈夫、私がいるから、って。その言葉にどれだけ救われたか……」
「……そ、んなの、ただの気まぐれよ」
震える声の否定は驚く程に説得力がない。
「それでも私は由梨に助けられたの。あの時の由梨の優しさは本物だって、今でも信じてる」
「……ばかじゃないの」
ぐいっと葉山さんを引き離した浅野さん。
「あんた、ほんとに大ばかね……」
それだけを小さな声で呟くと部屋のドアを開け走り去ってしまった。
「あ、ちょっ、浅野さん!」
俺が慌てて追いかけようとすると腕を掴まれ止められる。
「悠一さん、でも……」
「まだ仕事は残ってる」
「え?」
振り返った室内には悲しげに佇む葉山さんの姿。
だけど、それだけじゃない。
「そろそろ出てきたらどうだ」
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