あの日の言葉

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「……ありがとうございました」 思いのほかはやく涙を止めた葉山さんは、泣き腫らした顔ながらもなにか吹っ切れたような笑顔でお礼を言って部屋を去っていった。 その姿を何故か後ろ髪を引かれるような気持ちで見てしまう。 なんとなく、胸ん中に足りない気持ちがあるような…… なんだこれ。 「恭弥、体は何ともないか?」 僕の両肩に手を置いて視線を合わせ問いかけてくる翔さんに頷く。 「疲労感はありますけど、平気です。僕の力が役に立ったなら、それでいいです」 その言葉を聞いてみんながギョッとしたような顔をする。 ん?なんか変なこと言ったか? 「いや、きょーちゃん……いま、僕って……」 「へ?何のこと?」 「恭弥」 すぐ近くで僕を呼ぶ声が聞こえる。 「はい、なんです、っ!んんっ!?!?」 突然唇を奪われバタバタと抵抗するが、こうもガッシリ抱きしめられていては満足に逃げることも出来ない。 「ふ、ぁ……ゆう、…ち、さん……」 どんどん甘くなっていく行為に抵抗する気も薄らいでくる。 むしろさっきまで足りないような気がしていた胸の中が満たされていく感覚が心地いい。
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