始まりは唐突に

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ゴクリと息を呑む音が隣から聞こえる。 ふっ、と浅く息を吐いて扉を開ける。 なんの変哲もない小さな教室。 強いて言うなら本が異様に多いだけ。 「いつもと変わったとこあるか?」 「いや、今は特になにも……」 自信なさげに眉を下げる宗介。 教室の真ん中あたりまできてぐるりと見渡すけどそんな気配はない。 「どう?」 「とりあえず今はいな……!?」 背筋が凍る。 室温が一気に下がったような感覚。 「恭ちゃん?」 いきなり黙った俺を不思議そうに見つめる宗介。 どこだ、どこにいる。 『セ……ンセ…?』 「っ!?」 背後から聞こえた声に振り返ると 「い、た……」 俺達が入ってきた入口。 その天井からぶら下がるように首を出している、今回の犯人だろう。 「黒猫、か……?」 「え!?恭ちゃん見えたの!?どこ!?」 宗介の声に反応して黒猫がぐるんとこちらを向く。
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