電子化脳シンドロームの欠片

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 入隊後まもなく、透哉はいともあっさりパイロットになった。もちろん悔しかったが、でも透哉ならば当然だという気持ちもあった。透哉は成績にしても運動能力にしても申し分なく、そして、すぐ感情的になる自分とは違い彼は常に冷静だ。 …………やっぱり、性格の問題なのかな…………  透哉だけではない、他のパイロットもみな沈着冷静な者ばかりだ。そう考えると、自分にはもう可能性が残されていない気がした。  でも、それでもまだ別の道を選ぶ気にはなれなかった。親友の菜穂からも、体力勝負で危険をともなうメンテナンス部よりも、自分と同じ管理部に来たらどうかと言われていた。確かに軍に採用された女性の多くは管理部などの部署に配属され、ここのメンテナンス部にいる女性は礼香だけだ。 「…………礼香は今もパイロットを目指しているのか?」  深紅の機体を見上げながら物思いにふけっていた礼香に、透哉が突然そんなことを尋ねてきた。 「うん…………諦めてはいないよ」  正確には、諦められてはいないといった方がいいのか。そうは思ったけれど、透哉に弱音を吐く自分を見せたくなかった。
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