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──血ぬられた復讐のプロローグ──
私には一生涯忘れられぬ、幼いときの忌まわしい記憶がある。
──美しい森。
いまも眼を閉じると真っ先に思い出すのは、父と母と、多くの兄や姉や弟妹ら私たち家族が棲んでいた、あの美しい森だ。
緑豊かな山々。
青い空と広い大地。
清らかな水の河川と湖。
毎日のように愉しげに、おしゃれに着飾った草花は歌い、お喋りで賢しい樹木は語らい、合わせて鳥や昆虫が、悪戯好きの妖精たちと一緒に不思議なハーモニーを奏で陽気なダンスを舞う。
そして、さまざまな姿形をしたモンスターたちが争うことなくそれぞれの領分で、獲物を喰らい、愛を交歓し、安全な寝床で眠る。
そんな気ままな生活を、すべての生き物たちが平等に、自由に、営む山深く存在する地上の楽園。
いつまでも、永遠にあの美しい森の楽園でいつまでも、みんなで仲良く幸せな暮らしをつづけていけるものだと思っていた。
そう、悪魔たちがやってくるまでは。
およそこの世のものとは思えないほどおぞましく、おそろしく凶悪で、無慈悲で、情け容赦ない冷酷無比なあの、邪悪な者たちがやってくるまでは。
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