第1話 電話

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でも、その後母さんの話を聞くと父さんはガンをかなり早期に発見できたらしい。 ガンにはステージというものが5段階であり、ステージ毎に生存率が大きく変わってくるというものだった。 幸いにも父さんはステージ0という、最も早い段階で発見できたおかげで、5年後も生存している確率は94%というものらしい。 その聞いて少しだけ気持ちは落ち着いた。だが実際には胃がんとなると胃袋の切除を行うわけで、術後はまともに食事をとることもままならないようだ。また、胃袋は数年かけて元の形に再生していくらしいが、その間はもちろん胃袋がない状態なので食欲も少なくどんどんやせ細っていくんじゃないかという話聞いた。今までに医者などから得た知識を口早に僕に話す母さんはとても心配そうに見えた。 『だからはやく帰ってきて!学校は夏休みでしょ?今日帰ってこれるわよね!?お願いね!』 そう言い放つと、母さんは僕の返答をはなから聞く気がなかったかのように電話を切ってしまった。 「地元か...」 僕は2年前、地方から東京の高校に通うために上京してきて、今はその高校の学生寮に居住している。 最後に実家に帰省したのは去年の年末だったので、半年以上実家には顔を出していなかった。 ただ、その間も母からご飯は食べているかだの、学校は休んでいないかだの、おせっかいの連絡は来ていたのであまり久しぶりという感じはしなかった。 「ちょうど夏休みの初めだし、実家には夏休みが終わるまでいようかな...。」 父さんの容体が心配だったことや、高校の友達とも大した約束はしていなかったこともあり、今年の夏休みは実家で過ごすことに決めた。 すぐに、唯一約束していたゲームのネット対戦の約束が出来ないという旨の連絡をクラスの友達に送り、帰省の準備に取り掛かった。
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