自世界転入とかいう和製和語

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「……気持ち悪い響きだな。一瞬引きこもりの中二的表現かと思ったわ。んで?」 「でね、主様は今こうしてこの世界にいるわけだけど、 本物の主様は今、現実の世界でノートに向かって今まさに小説執筆中なの。 私を………握りしめて………。」 「抱き締めてみたいなノリで言ってんじゃねぇわ。」 「握りしめて!宇宙の!果てまで!」 「うるせえわ。黙れ。 で、すると何か?俺は今意識だけこっちに飛んできてて、ノートの外では現実の俺が必死に小説かいてると。 って、おかしくね?意識こっちにあるのにどうやって小説書いてるんだ?向こうの俺は」 「だから、ね。空間認識能力を最大限に発揮してほしいんだけど」 「お前軽くバカにしてんだろ」 「つまり、主様がここで起こした行動そのものが、現実の主様の手で小説として書き起こされる、って事なんだよ。 分かりにくかったら、国会の議事録と同じようなものだと思ってくれたらいい。 発言の一つ一つが小説の一言一言になるし、行動の一つ一つが能動表現になる。 つまり、主様は今、小説を書くために小説の主人公としてここに下りてきたってわけ!」 ビシッ!と人差し指をこちらに突きつけるシャーペン。いやもうこの際だからあのバンコク+フ・リシャ・ペンナー二世の中から呼びやすそうな名前を拝借することにしようか。 「あのさ、二世」 「………なにそれ」 「何が?」 「その、二世って、何」 「お前の名前」 「リシャって呼んでくれますか?そのためにわざわざフリシャをフ・リシャみたいな感じに分けたんですけど。」 「ああ、悪かった。 じゃ、リ・ガズィ」 「そんな情けないモビルスーツと一緒にしないで!」 「わかったよリシャ。でさぁ。 つまり何か?俺は俺が書く小説の主人公としてここへ召喚されて、その行動いかんで現実の俺が小説をそのストーリーに従って書いていく、ってことか?」
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