2897人が本棚に入れています
本棚に追加
「直美、家に行かずに直できたのか?」
「だって、家に帰ったら出る気がしなくなりそうで。でも絶対食べたかったから、考え合わせるとこうなりました。」
大き目のキャリーをゴロゴロさせて待ち合わせ場所に来た私をみて、章吾は呆れたように言った。
関空から千歳につき、速さより楽をとってバスで市内まで移動してきた。
JRは15分に1本でているし40分弱で札幌駅に着く。でもキャリーをもって階段を上り下りするより、バスに積み込んで座っているだけのほうが断然楽ちん。1時間以上かかっても問題ない、どのみち章吾だって定時であがることはないから。
結構私達は忙しい仕事の毎日で、一緒に住んでいるといっても顔を見ない日も多い。
四六時中一緒にいるわけじゃないから上手くいっているのかもしれないね、いつも二人でその結論に辿りつくから互いの時間の使い方に口を出すことは無い。
今日だけは絶対SABUROに行きたかった。立ち食い弁当やチェーン店の居酒屋にコリゴリ。
身体に優しく美味しい食事を心も身体も求めていたから。
新たに顧客になってくれたカップルと話をしたせいか、なんとなく章吾を誘った。
幸い仕事を切り上げても問題なかったようなので久しぶりにデート。
(ただの食事と言われちゃったら、それまでだけど。)
「またこっちで展示会してくださいね、遊びにきます。」
そう言って笑った顔がかわいかった。それを横でみている彼氏さんも優しい顔をしていた。さあ、美味しいものを食べるしデートなんだから、疲れた顔を貼り付けたままじゃいけない。
ゴロゴロ転がしていたキャリーは章吾が持ってくれた。「持つよ。」そんなことを言わないのがいい。
当たり前にしてくれると嬉しいよね。
最初のコメントを投稿しよう!