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「メニューの上から下まで全部食べたい!そんな気分。でも無理だから残念。」
章吾はおかしそうに笑って私の手の甲をつっついた。
「たまには違うもの食べてみれば?直美はいっつもラグーのパスタとカボチャと豆のサラダだろ。ワインを一本あけて、もう一皿なにか頼もうか悩んで結局頼まない。」
「でもラグーは食べる。絶対食べる。」
何も頼んでいないのに赤ワインのボトルが運ばれてきた。トア君がソムリエナイフをつかってコルクを開けてくれる。たぶんハルちゃんか実巳君が持っていくように言ったのね。
「お話が聞こえてしまったので確認してまいりました。ハーフサイズOKもらいましたので、少しずつ色々なものを召し上がってください。」
ト・・トア君。あああ来てよかった。ちょっとウルっときたわ、この疲れた身体に優しさが沁みこんじゃう。
上から下まで全部食べたいを聞いて実巳君に確認してくれただなんて、惚れちゃいそう!
章吾と悩みながらオーダーを済ませてワインで乾杯した。
「それでお土産はなに?」
「蓬莱の肉まん。」
「やった~。通販で買うほどでもないけど、土産でもらうと嬉しい。」
「あと壺プリン。壺が何かに使えそうだったから。」
「壺にいれる常備菜でも作るか、今度の休み。」
「そうね、まずプリン食べなくちゃね。」
美味しい料理と、なんてことのない会話。それがとっても嬉しくて癒される。
仕事は大変だし、時間と仕事量に押しつぶされそうになることもある。そんな毎日でも自分を救ってくれる場所や誰かがいてくれることがとても大切なことに思える。
ハーフサイズの沢山の皿がテーブルにのって、美味しそうに食べる章吾が私の前にいる。
とっても大事。
とっても大切。
そしてその事実を「SABURO」の存在が大きなものにしてくれる。
やっぱりここは最高の場所。
誰にもおしえたくない、そんな場所。
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