忍び寄る闇

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アキは出来るだけの力を込め、紫乃に危険な状態であると警告を発したが… 伝わらなかった。 ルリを使って耳鳴りやラップ音を生じさせたが無駄に終わった。 紫乃。 私に 気付いて 私の声に気付いて どうか… 愛しい紫乃 みすず… 今はただ、穿に頼るしかない。 あの者には私の警告と声が届いている。 守護としての役目を果たすと約束してくれた以上はそれなりに彼女のことを守ってくれるはずだ。 アキはひたすら、穿に念を送った。 紫乃を頼むと。 すると穿は突如アキの前に現れた。 昔の時代の西洋人が身に纏うような服装だった。 短髪でウェーブのエメラルドグリーンの髪が揺れる。 「お前は一体、紫乃とはどういう関係性なんだ。 紫乃はお前の事はあまり分かっていないみたいだが。」 「君には内緒」 「彼女を守れと必死で俺に頼むくらいだから、大切な存在なんだろ?」 「そうだね。誰よりも。」 「俺さ、初めて人を守って分かったんだ。 人の醜さとか汚さとか。 俺は人間に生まれた事がないから知らなかった。 それでも守ることはするけどな。 あいつ、今は何の力もない普通の子だろ。 俺が傍にいるよりも、いない方があいつにとっていいんじゃないかと思う時があるんだ。」 悩ましげな彼をアキは冷静な目で捉える。 「それは私が決める事ではない。君が決めることだ。」
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