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大本堂からずれた道の先には墓地がある。
私の身体は全身でそちらには行くなと悲鳴をあげた。
「ごめ…ん。そっちには行けない…。行きたくない。本殿の横に階段があってそこから頂上に行けるからそっちから行こう?」
「わかった。」
そして暫く沈黙が続いた。
お互いの存在が恐怖を和らいでいるのがわかる。
安心していた。
真弓がいると何故か心強かった。
一人だったら、入り口のところで立ち止まり、折り返していたに違いない。
それくらい怖かった。
いたるところから突き刺さるような視線を感じるのだ。
それは私も真弓も登り始めの頃から感じていたが、大本堂に近づくと更に視線の数が増した。
作り物のお化け屋敷より何十倍も恐怖心を煽られる。
やっと頂上へ到着し、ベンチに二人で腰掛けた。
頂上には先ほど入り口にいた、サークル生達が賑わっている。
頂上から見下ろした東京の景色は最悪だった。
真っ赤に染まり、まるで地獄のように醜く見える。
何故そう見えるのかはわからなかった。
清浄な場所から見ると、穢れた地が痛々しい程良くわかる。
真弓はベンチの前にあるテーブルにロウソクを置き、火をつけている。
「え、マジでそれ使うの?」
「うん。モチロン。」
そして怖い話をすることになった。
恐怖も究極まで達すれば麻痺をするんだとしみじみ思った。
それにサークル生達がいるので、それ故に怖さがどこかへ吹き飛んでいたのかもしれない。
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