其々の思い

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母親が目を覚ましていないうちにそっと家を出た。 通い慣れた通学ルートをたどり、学校に到着する。 美術部の部室は三階の一室しかなく、その中に入るといたるところに様々な色の油絵が付着していた。 油の匂いも強く、香りが染み付いている。 おそらくどの部室と比べても此処が1番汚い。 部室では4、5人が既に活動しており、トランプをしながらデッサンをしていた。 その中には真弓と美優もいる。 私はキャンパス油絵一式を倉庫から取り出し2人からは少し離れ、デッサンを始めた。 紫乃は人物画が苦手な為、風景画や動物画が多かった。 部活動として動物園で動物をスケッチし、それをキャンパスに書き写していく。 紫乃はまだ下書きの段階だ。 対して真弓は人物画の方が得意なようで、美優をモデルにデッサンしていた。 色も既に入れ始めていた。 部活が終わると紫乃は同じ部活仲間のキョウコと共に帰宅することになった。 スクールバスは部活仲間全員そろっていたが、それぞれのペアでバラバラに座り、他愛ない話をして盛り上がる。 バスが停車して降りた後、駅までの帰宅途中、前方に真弓と美優が一緒に帰って行くのがチラリと見えた。 (美優は真弓を疑っているけど、でも結局仲がいいんだな…。)
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