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雪華は本当は苦しみに苛まれ続けていた。
全てがどうなっても構わないと思ってしまう程、人にも霊界にも絶望していた。
それ程の苦難と苦痛を味わってきたのだ。
人間を簡単に好きにはなれない。
いつの間にか闇の力は暴走し、収集がつかなくなっていった。
自然霊がこの力に感応し荒れ狂う。
現実世界では土砂災害が起こる。
はやく、わらわを止めろ。紫乃。
雪華はぼそりと呟き、哀愁を感じさせる横顔が天を仰いだ。
雪華のいる場所は闇の最下層の一つ前の幽界。
この層で改心し上層界に上昇した者は今までほとんどいない。
皆地獄の霊界へと落ちていった。
この界は殺し合い、奪い合い、酒乱に浸り、淫乱に色欲を求め、食欲に溺れた者達が蔓延っている。
現界の人間に憑依し、堕落させ、最後に幽体は最下層へ落ちて消滅し、霊界の地獄へと堕ちる。
「我が同胞よ。呼ばれて来てみたはいいが一体何用だ?」
金髪の長い髪に美しい姿をした男性だった。異国の容姿に黒いマントが生える。
「お主、人間の小娘を唆したようだな。丁寧に寿命を削る咒式など教えて一体どうするつもりだ。」
「転落させ、力に溺れさせ、闇の力となりさがった時にご馳走をいただくためだ。
後天性の人間は実に力に自惚れて地に落ちやすい。
そろそろ頃合いだろう?」
「そうだな…好きにするが良い。何ならわらわが手を貸してやろうか?」
「獲物を横取りする気だろう?そうはさせないよ。
だが、力を解放した大怨霊様とは度々協力し合うことがあるかもしれないね。
」
そして魔物は闇に紛れて消えていった。
雪華は鼻を鳴らす。
「くだらぬ…。」
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