不穏な陰影

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ミチカは精神体を飛ばす手法を使い、頻繁に幽界へと赴いていた。 現界と同じ位置にある幽界のとある洋館にミチカは穿といつもいる。 刻印で霊達を縛り、従え愛でる日が続く。 特に穿に対しては特別待遇で愛し合う程の関係だった。 黒を全身に見に纏う美しき魔物は洋館に突然現れた。 ミチカは驚く様子もなく、魔物の名を呼び抱きしめる。 魔物の名前は「ナキア」 ミチカはその魔物を神として疑わなかった。 ミチカと魔物の出会いはいつの頃か、現界にて突然ミチカの前に現れたのだ。 「我は厳然たる神である。 これからはずっとそなたの側にいて、そなたに使えよう。」 美しい容貌だが、神などとは無縁な程禍々しい気を放っていることにミチカの霊的感知能力では気付かない。 突如の事だった。 光が降り注ぐ。 魔物もミチカの精神体も消え、無理矢理使役された霊達の拘束が解ける。 霊達は一瞬にして逃げ出した。 精神体を飛ばす力を失い、もとの肉体へと戻ったのだろう。 穿はどうする事も出来ず、呆然としていたがしばらく経ち現実世界でミチカの元へと向かう。 ミチカの本体は病室にあった。 ミチカは現界で突然発狂し、ノイローゼを発症し、精神疾患を患っているとされ、精神病院に運ばれたのだ。 そしていつもなら穿の姿に気づくはずなのだが、全く気づかない。 彼女は苦痛に顔を歪め、泣いていた。 彼女には今、魔物が見せてる幻覚に苦しめられていた。 「あの女のせいだ…!許さない…。」 (見えなくなった…?) 霊感霊力を何者かに閉じられたのだ。 霊感霊力を奪ったのは魔物ではない。 魔物は魂を貪るまでミチカの側に居て騙すつもりだったからだ。 ミチカの持つ霊感霊力はもとは神聖なる力。 神々より与えられしモノ。 それを邪な気持ちで使い続けた結果、守護神に取り上げられたのだ。 あの女とは恐らく紫乃の事だろうか…。わからない事を1人呟いている。 穿との契約もミチカの力がなくなった今、自然と切れていることに気付く。 ミチカの後ろには魔物が二人羽織のようにくっついていた。 魔物の影響で霊的感知はあるのだが、正確性に欠けている為、幻覚と表現しても変わりはない。 ミチカ自身、自分の霊力ともに霊的感知能力が無くなった事には気付かないだろう。 こうして、ミチカは自滅した。
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