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目を閉じると仄暗い水面から赤い十二単、朱色の紅が艶やかな雪華が突如現れ、手を差し伸べてきた。
ならば眠れ。わらわが暫くそなたの代わりをしてやろう。
辛いだろう?
わらわならそなたを助けてあげる。
紫乃は何もかもがどうでもよくなり、縋るように雪華の手をとった。
そして眠るように紫乃は意識を手放した。
アキは紫乃を庇うように穿の前に突如現れ、穿を冷めた目で睨み据える。
「君はもともとそういう奴だったのかな?それとも新しい主人に染まったのかい。」
「そんな力の弱い者の傍にいる必要が何処にある?お前だって。」
「必要性なんて別にないよ。私の事は変なやつだと思っててくれて構わない。」
穿は舌打ちする。
「相変わらずはぐらかすのが好きだな。なら何故だ。何故そんな弱い奴のそばに居ようなんて思える。はぐらかさずに答えろ。」
「誰だってさぁ、最初は弱い者だよ。どの魂もね。確かにそれぞれ強くなるまでのスピードやその魂の性質は違えどね。
逆を言えば時が来れば誰だって必ず強くなれるということだ。
私はその時を待っているだけ。
たまたまあの子を好きになった。
だからあの子が強くなるまで傍にいる。
たとえ幾年の中で何者になろうとも。
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