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だが、それを教えてあげる程アキは優しくもないし紫乃以外は基本的にどうでも良かった。
「あの桜って女もさぁ、霊が見えもしないくせに、自分の式を自慢気に連れちゃってムカついてたんだよね。
あいつの式を盗るのは失敗しちゃったんだけど、そいつは自爆したし、穿ちゃんはちょうど誰とも契約してない状態になったしぃ、ユリアが浄霊しようとした時にミチカが貰い受けたってわけ。」
「へぇ、良く喋る子だね。」
いつまでも目覚めない紫乃を心配になりちらりと見やる。
アキは紫乃を見てある事に気付いた。
紫乃の魂が…ない!?
「紫乃!!」
紫乃に駆け寄ろうとする。
「駄目よ。穿ちゃん抑えてて。」
少女の言霊が縛り、動けなくなる。穿は迷う事なくアキを抑えつけた。
「紫乃!!」
アキは背後から押さえつける穿を構う様子もなく紫乃を呼ぶ。
「穿ちゃん、こっちに連れてきて。」
力がまた更に発動した。
烙印が思考を鈍らせる。色欲を募らせ惑わす。
アキはミチカと名乗る術者に無意識に近寄る。
「穿ちゃん、良い子。後で御褒美ね。さて、貴方のお名前は?」
「…アキ。」
「キス、して。」
「嫌だ」
ミチカは容赦なくアキの頬を叩いた。
「言うこと聞けない悪い子はお仕置き。」
温厚なアキでも流石に怒りに満たされ力を解放仕掛けたその時だった。
その瞬間紫乃はゆっくりと起きあがる。
頬を流れる涙はまるで彼女とは別物のように流れ落ちた。
陰湿な笑みを浮かべる。
「紫乃を呼んでも無駄だぞ、ヤツノカミ。わらわが紫乃の身代わりだ。
そこの術者に咒式を教えたのは我が同胞だ。
術者が道を誤れば邪の道へと進み、我らが操るに容易い手駒となる。
その者は既に半分、魔の力に侵食され膨れ上がっておる。
その力をもって最後は代償をはらって貰おう。」
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