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イツキは女性人霊の後を追うようについていく。
ヨーロッパの貴族の風貌だ。
誰もいない暗い森の中を歩く。
すると咄嗟に黒い着物の男が襲いかかってきた。
かわしきれずに右肩から腕にかけて血飛沫が舞う。
ヨーロッパの貴婦人も本来の野狐の姿と化す。
「お前、我等を裏切るつもりか。」
男は憎々しげに語りかける。
襲ってきた黒い着物の男も野狐だった。千月(イツキ)の同胞だ。
「オレはもうウンザリなのだ。御前達と人間に悪さをする事など。」
「軟弱な腰抜けめ。人間など愚かでしかない。
我らを下等霊だと罵るが、奴らこそ下等だ。
そんな奴らと何故つるむ必要があるのか。
貴様と共にいるあの人間の女、あんな霊媒女、我等の道具とすればよい。
」
イツキは野狐を睨んだ。
「それはならぬ。あの子に手を出す事は許さぬ。」
突如現れた薙刀を手に持ち構える
「野狐のくせに、情が湧いたか?出来損ないめ。」
野狐は狐火を放った。
薙刀で払うがあちこちから火の粉が襲う。
かなり負傷していたが、突如イツキを守る結界が施される。
力が流れ込む。
これは…
紫乃だ。
紫乃とは契約もしていないし、上下関係も繋がりも一切無い筈だった。
紫乃は現界からイツキの危険を察知し、故意に力を貸しているようだった。
おそらく、アキが彼女に気付かせたに違いない。
驚く野狐の隙をつき、薙刀を振りかざす。
敵が深傷を負った隙にイツキはその場を後にして退散した。
イツキはアキに回復される前の怪我を負った時の出来事を思い出す。
外の草場で仰向けに空を見上げていた。
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