第1章

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「ただいま!」 玄関の扉を開け、大きな声でわたしは言った。返事はない。誰もいないから。 でも、ママは絶対、家の前でただいまを言いなさいと言う。 理由を聞くと、変な人がわたしのことを見ていて、お家に1人でいることが分かっちゃうと危ないから、らしい。 何が危ないのか分からないけど、お家にママやパパがいるように振る舞わなきゃいけない。 玄関先には、1台の自転車が置いてある。車はないけど、カモフラージュだ。でも、いない時に毎回これ見よがしに自転車を置くのだから、あんまり意味がない気もする。 家の中に入って扉を閉めると、しっかりと施錠し、赤いランドセルをその辺に置いた。 お腹すいた。 いつもリビングのテーブルの中央にお菓子が置いてあるから、それを取りに、小走りでテーブルへ駆け寄る。 1枚の紙切れが置いてあった。綺麗な字で、わたしの名前が書かれている。 佳乃へ ランドセルはきちんとお部屋に片付けること! お菓子は食べてもいいけど、先にちゃんと手を洗ってね。パパは遅くなるけど、ママは夕飯までには帰るよ(^з^)チュッ ママより チュッ、だって。ママはいつも陽気。 わたしはランドセルを2階の自分の部屋に置いて、洗面所で手を洗い、お菓子を食べた。 ちゃんと言うこと守ったよ。だから、お仕事から早く帰って来てね。
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