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「朝、校長先生も言っていましたが、最近動物たちに酷いいじめをする不審者が、この街に出没しているみたいです」
放課後のホームルームで、男の先生が言った。わたしは、机の上のランドセルに乗せていた顎を離して顔を上げる。
「お巡りさんが見張ってくれていますが、とても危ないので、今日から集団下校をします。みんな、正面玄関に集合して下さい」
「ねえ、知ってる?」
正面玄関に行くと、あいこちゃんが声をかけてきた。
「その、ふしんしゃ、って人、動物をいじめてるんじゃないんだって」
「どういうこと?」
わたしが聞くと、あいこちゃんは口をわたしの耳に寄せる。
「ころしちゃうんだよ」
生暖かい息が耳にかかり、ぞわりとした。
ころしちゃう?あいこちゃんの言葉を反芻する。動物を?
「それにね、どうやってかはわからないけど、他人のお家に勝手に入って、ペットとかもころしちゃうんだって」
人のお家に、どうやって入るの。そんな疑問よりも、恐ろしさに体が震えた。それって凄く、怖いことだよ。
先生を先頭に、1列になって歩いていると、わたしがいつも右に曲がって行く道を、先生は真っ直ぐ進んで行った。その先生に続いて、みんなも真っ直ぐ進んで行く。
わたしは慌てて、前を歩くあいこちゃんのランドセルを掴んだ。
「ねえあいこちゃん、わたしのお家、ここを曲がるんだけど」
雑木林と川に挟まれた薄暗い道を指差すと、あいこちゃんは不思議そうに首をかしげた。
「帰れば?」
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