0人が本棚に入れています
本棚に追加
「ほうほう。それならまずキミが手本を見せてもらおうか?」
「なに?」
俺が聞き返すの文教は何くわぬ顔でそれがさも当然と言わんばかりに、
「だから、それほどまでにあつくない話に並々ならぬこだわりがあるというのなら、僕に少しばかり手本を見せて頂こうかと思ってね」
「そんな情熱は見せた覚えは無いけどな」
「小賢しい言い訳は結構だ。男はやるかやらないかだろ?」
文教の野郎はそう言うと意味ありげな笑みを浮かべた。
その通りだ。
時間潰しにはちょうど良けど。
(んー難しい)
暑くない話って言われてもな。
熱くなった頭をぼりぼりと乱雑に掻いてみる。
すると、どうだろう。何かが抜け落ちたかのようにポッと閃いた。
(そうだ。この話にすっか)
俺は手元に置いてある水滴にまみれたガラスのコップを手に取り、中の水を一気に飲み干す。
「そうだな。それじゃあ、これは彼女と夏祭りに行った時のはな……って、なんで消火器をこっちに向けてるんだよっ!」
「熱い。カップルのイチャイチャ話なんて熱苦しいに決まってる。熱いものは消火しなきゃだろ?」
「そんな話聞いたことないぜ! だいたい、そんなもので何を消すつもりだよ!」
「君の安っぽい命の灯火を……」
「安っぽい!? 人の命の値段を安いと断言するんじゃねぇっ!?」
っていうか、命の灯火って何だよ。なんで静かにいのちを摘み取られようとしてんの、俺。
プラスチックゴミでももっと扱いがマシだと思うが!?
「そもそも、君に彼女がいたって話なんて聞いたこと無いけど?」
「そりゃあ言ってないからな」
「キャサリン、レベル98?」
「レベルってポケモンかよ」
あとレベル98って無駄に強いじゃねぇか。嫌だわ。そんな彼女。
ガチで火炎放射とか冷凍ビームとか使いそうな女子とか怖くて近くにも寄りたくねぇや。
最初のコメントを投稿しよう!