それは暑い暑い日のこと

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「ほら、いたじゃん。同じ大学のサークルの後輩でさ。姫様カットっていうか純和風な感じで少しスレンダーだけどそこがまた俺好みな……」 「コイキング?」 「そいつはきもいな」 「ボロの釣竿で釣り上げたんだろ?」 「コイキングだな」 「最初ははねてばっかしじゃなかったのかい?」 「コイキングだな」 「進化したらギャラドスになってしまう?」 「コイキングだなっ!? どこまでコイキング推しなんだよ!?」  何故だ!? どうして俺の彼女で検索したらコイキングしか出てこないんだ!? 「いや、僕が思うに君のその彼女っていうのは一時流行ったバーチャル彼女的なやつなのかと」 「たとえバーチャル彼女だったとしてもせめて人間にしてくれ! さすがにコイキングを『コイツ』とか『ハニー』とか呼んでる人がいたらドン引きだからな!?」 「で、聞きたくも無いけどさ、その彼女は今どうしたの?」  本当に興味の無い瞳を向けて文教が尋ねてきた。  思わず顔が引き攣った。  こいつ嫌なところ突くなー。相変わらず。 「えっ!? あぁ、そのぉ……別れた」 「さて、さっきの話の続きを聞こうか」 「なぜに急に興味津々!?」 「ほら、どんなのろけ話を聞いても『でも、こんな彼らもの恋愛も一時の迷いに過ぎなかったのである』って文面が後付できるからさ」 「くずの極みだな、お前」 「あっ、ちょっと待って。君の話の前に今から『これは彼の今は無き青春の一ページである』ってナレーション付け加えるから」 「いらねぇお世話だわ!? むしろ黙れ! 俺のこの話に関わるな、ドンタッチミー!」  くそ、俺の尊い恋愛の一ページがコイツのせいで黒歴史になるところだった。  すました顔でフルーツジュース飲みやがって。パフェとフルーツジュースってお子様セットかよ。 「今、お子様セットかよ。って思っただろ?」
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