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青森駅前の繁華街のにぎやかさは、日が暮れてからが始まりで朝はだんまりだ。
同じく中学校へ近づくにつれしいんと静まり返る。
スクール鞄を自転車のかごに強引に突っ込んで、全速力で行く生徒達がぽつぽつ現れる。
ぜえぜえと荒々しい白息を吐く学校指定のジャンパーを着た青少年達は、自動車の排気のようだった。
市営バスの車窓で学校に向かう生徒を同じクラスメイトの阿倍野美羽と眺めながら、小口ナターシャはそう思う。
「やっぱり、自転車って走ってないよね」
「そうだあ」美羽も頷く。「春になったら、あの辺りサイクリングしたいなー」
「えー、自転車下手だから乗りたくないなー」
美羽が言うには自転車なんて夏と秋の中頃までしか使えないそうだ。
冬になると路が凍結してスリップするから、誰も事故りたくないから乗らない。
ナターシャも、留萌ではほとんど乗った事がない。
さらさらした金髪に白雪の肌をしたナターシャへ、隣席にちょこんと座っている美羽が心配そうに声をかける。
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