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もう少しで白い物が降りてくる時期に、古川は転校した。
ナターシャに殴られたのが原因なのか、かねてから親の事業が傾いてとか噂が流れたが、真相は誰一人知らない。
軋む教壇に立って別れの言葉を芝居がかった口調で演じたのに、誰も拍手を送ったり、泣いたりしていなかったのが古川のすべてを現していた。
「古川さんかわいそうだあ」
「全然」
そうだ、転校と言っても近くの公立へ編入するだけで、所要時間も徒歩30分もかからない。
一切が茶番だった。
しかし、目下の問題が解決できたのでナターシャはにんまりする。
ボスの古川がいなくなると、潮が引いたように美羽とナターシャにちょっかいを出してくるやんちゃがいなくなったのだ。
2人は静かな日常を手に入れ、丸顔で愛嬌のある美羽は臆面なくナターシャに笑いかける。
「なんなー、じろじろ人ん顔見てー」
美羽は笑ってるんがいい。
しみじみそう思うナターシャもはにかみで返す反面、やっぱりお父さんみたく殴らないとなんにもできないんじゃないのかと苦悶する。
笑っていた美羽はナターシャが手を出したんで、謹慎になるのか不安だとナターシャに漏らす。
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