2. 三回忌

1/3
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ

2. 三回忌

    退学願いを保留にしていてくれた担任の先生のおかげで、高校に復帰できた俺は、また出席率の悪い学生に戻った。福岡の街に戻ってまだ幾日も経ってないのに、既に幾つかのバンドに誘われていたが、今一やる気が出ないのと、高校を出た後は、海外にでも出ようかなと考えていたので、ライブの客演ぐらいしか、しない事にしていた。  その日は、夕方から翌週のライブの為のリハがあり、俺自身にとっても特別な日でもあったので、朝の出席確認の後、学校を何時もの様に抜け出した。  まだ、通勤ラッシュが終る前だったので、多くの社会勤めの人や学生達が足早に駅の外に向って歩いていたが、その人達とは反対の方向に歩いていた。ついこの間まで、ホテルのフロントデスクで働いていたのに、また高校生をやっている。服装は大して違いがない。ギターも同じ物を下げている。でももう、今日子さんは俺の横にはいないとゆう事に、少し違和感を感じていた。   夢の中に現れたアキは、今日子さんの事を喜び、自分自身も、今日子さんから愛され、愛していた。彼女はホテルを辞めて、福岡について来ると言ったが、俺はそれを拒絶して、軽井沢を離れた。  自分を嫌悪していた。   でも、今から思えば、単に度胸が無かっただけかもしれない。  人気のない駅で降りて、改札口を出た時、 「おかえり、りょう先輩。今日絶対来ると思っとった。」と制服姿のサチがベンチから立ち上がって、声を掛けてきた。  「ああ、サチ、ひさしぶりだね。元気だった?でも、良く分かったね、俺が来る事。」  「だって、私の情報網、広いとよ。」と言って、真面目な顔つきになり、  「先輩、順子さんの事、ごめんなさい。怒っとうとでしょう。本当にもうあんな事せんけん、許してくだっさい。」  「なんだ、順子ちゃん、連絡いれたんだ、、、大丈夫だよ、サチ、怒ってないよ。」  「本当に?」  「ああ。ところで、どうして俺が福岡に帰って来た事知ってるの。まだ10日位しか経ってないよ。」    「先輩の学校に、中学の水泳部の後輩がおると。それと、UK の日野さんに先輩が帰ってきたら、電話して欲しいって、頼んどいたけん、だからこの間、連絡もらったと、、、それに、今日はお姉ちゃんの命日だから、先輩、絶対来ると思っとった。りょう先輩、お姉ちゃんの所行くとでしょう。私も一緒に行ってよか?」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!