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「来たな戦車乗り共!!準備はいいか!!」
日本帝国軍の軍服に身を包んだヒゲ面の男が、叫ぶ。
身長は平均より少々高め、体重は若干重め、しかしその暑さは太陽の日ではないほどに熱い。
暑苦しく、むさ苦しく、オヤジ臭い。
「うぃ~っす」
「リョウカイ!!」
気だるげに返事をする猫背の若い男もまた、同じ服装だ。
身長はヒゲ面の男よりも高いが、体型はスマートだ。
顔は悪くないのに態度や雰囲気が残念すぎる。
もう一方の元気のいい若者も、やはり同じ服装だ。
身長も体重も平均的、ただしかなり筋肉質だ。
そうそうお目にかかれないそのアホ面は、ヒゲ面の隣を飛んでいるモンシロチョウに向けられていた。
「亀崎隊長殿!一つ質問があります!よろしいでしょうか!?」
最も真面目そうに見える彼も、当然同じ服装だ。
男性としては小柄であり、丸めがねが特徴的な彼は、手を上げて質問の許可を求める。
「何だ岡村!言ってみろ!」
亀崎、ヒゲ面の男は亀崎という名前のようだ。
「戦車が日本製じゃないであります!」
彼らの後ろに鎮座する戦車。
それはどう見ても日本の戦車ではない。
「これは、ヘッツァーであります!」
独特な姿のヘッツァーは隠密性に優れている。
また、正面からの攻撃にも強い。
そして、丸っこくてなんかかわいい。
一般的な戦車とは全く異なるその愛らしい姿は、戦場の男達を癒すだろう。
しかし、ドイツ製だ。
どうしたってドイツ製だ。
「……乗り込め!!」
「えぇ!?いや、あの、この格好の意味は!?」
「乗り込まんヤツは履帯に括り付けてやるぞ!!」
「あ、はい、なんでもないです」
履帯とは、主にキャタピラと呼ばれる部分である。
しかし、キャタピラは実は、よそ様の登録商標である。
無論、この部分に括り付けられてそのまま戦車を動かされれば、めちゃくちゃ痛い。
大の男でも泣き出すほど、痛い。
「車長は俺だ!砲手小林!!」
「うぃ~っす」
「操縦手山岡!!」
「ハイハイハイ!!」
「装填手岡村!」
「……はい」
「全員居るな!!よし、進めェ!!」
男達は、戦場へと進む。
味方の殆どが撃破された、敗戦必死の戦場へ。
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