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「試合終了。全員、礼!」
敵味方の兵士が一列に並び、挨拶を交わす。
これは戦車を用いた戦闘で、強者を競う競技だ。
今回は自動選抜野良戦、つまり集まったチームを運営が振り分け、見ず知らずの味方と組んで見ず知らずの敵を倒す方式だ。
「いやぁ、惜しかったですなぁ!!」
亀崎は他の戦車兵への挨拶を行っている。
しかし、全く動かずにチンタラチンタラと準備をしていた彼らを、多くの戦車は侮蔑の眼差しで見つめてくる。
「また、組めるといいですな!!」
「ざっけんなバーカ!ちっとも働かないやつと二度と組めるか!」
「な、何だと貴様ァ!!」
「やんのかヒゲゴリラオヤジ!!相手になんぞコラ!!」
挨拶をしていたはずなのに、喧嘩が起きた。
車長としては素人以下な亀崎だが、喧嘩の方は滅法強いらしい。
「はぁ……。何してるんだろうなぁ……僕達」
「さぁ、なんだろな。おっ、レアゲット」
一般的な若者らしい服に着替えた小林は、また別のゲームをしている。
「まぁクヨクヨすんなって!次勝てるよ次!!」
「いや、お前、なんで無事なんだよ」
大した傷も無く、山岡はゲラゲラ笑いながら励ます。
励ましながら、彼はアリの巣をほじくっていた。
シャツと短パン、やってることと格好は虫取り少年か何かとほとんど変わらない。
「ふん、口ほどにもないやつめ」
相手を叩きのめした亀崎がやってくる。
どう考えても戦犯な彼があのような態度を取れば誰でも頭に来るだろう。
「車長。くさいっす。例えるなら、汗とウンコを凝縮させた感じっす」
顔を向けることもなく、小林は亀崎に辛辣な言葉をぶつける。
しかし、汗と鉄と油と硝煙の染み付いた彼は、加齢臭と合わさって実際非常に臭かった。
犬が居たなら死んで居るだろう。
「……そし、ならば風呂に行こう!敗戦祝いの奢りだ!!ジャンジャン浴びて、ジャンジャン風呂を飲め!!」
「敗戦祝ってる点について物申したいけどやっぱりあとでいいです。風呂の水なんか飲みたくないですよ!」
「いい出汁が出ているぞ」
「やめて!出汁が嫌いになります!!」
今日の戦いはこれにて終了。
ハチャメチャな急造チームにも見える彼らだが、まだまだ伸び代はあるようだ。
彼らの戦いは、まだ始まったばかりである。
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