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明日なんて、
なくてもいい。
最後に残るという
希望さえ、
どうだっていい。
私にしかあげられないのなら、
それをあげたい。
──なにを損なったって、
きっと後悔なんて
しようもないんだから。
「……あっ、だめだ……
だめだ、杏さん……ッ」
は、と声にならない
荒い息を漏らしながら、
桃さまは私の喉を掴んだまま
激しく動く。
それを悦い、と
嬌声で伝えられないことが
もどかしくて、
彼の腿のうしろに回した足で
軽く蹴飛ばした。
やめないで、
やめないで、と。
思春期の少年でもないのに、
桃さまは声を漏らした。
きっと世界中の誰も
聴いたことのないその声に、
私の中の白い闇が
どんどんふくらんでいく。
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