畦道。

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 「そういう事なんだよ。もう気が付いているんでしょ? 律くん。…とんだ恥かかされたわ。年下におちょくられて弄ばれたし」  『あーあ』と言いながら天井を見上げる優奈さんの目からは、やっぱり涙が零れ落ちてくる。  「別におちょくっても弄んでもないでしょうが」  そんな優奈さんにティッシュボックスを手渡す。  「どこがよ。散々『好き好き』言っておいて『やっぱり優衣がいい』って。年上をバカにしすぎ。しかも、『大人で落ち着いてるのが優奈さんの魅力』とか言われたら、泣いて縋る事も出来ないじゃん」  言い終わると、俺から受け取ったティッシュボックスからガッツリティッシュを引き抜き、豪快に鼻をかみ出す優奈さん。  「イヤイヤイヤ。大人で落ち着いてるキャラ崩壊してますがな」  「わざとですー。高校生相手に縋って『カッコ悪い女』って思われるのは、死んでも嫌だからする気なかったけど、ガサツな部分でも見せて嫌われた方が楽だから。じゃないと、変な期待が留まり続けてしまうでしょ。未練残したくないから」  俺を睨んでは、また鼻をかむ優奈さん。  俺が好きになった人は、やっぱり素敵な人だった。鼻かみすぎで超赤鼻になってるけど。
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