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「…え?」
優衣が足を止めて振り返る。
「だから、一緒に行こう。俺たちが一緒に登校する事で、嫌な気分になる人間はいないから」
『行こう』と優衣の背中をそっと押すも、動かず俺の目をじっと見つめる優衣。
「…なんで?」
「優衣、今日一緒に帰ろう。帰りに、優衣に大切な話があるんだ。行きに話すには時間が足りないから」
優衣の目を見つめ返すと、
「…分かった」
優衣が小さく頷きながら、俺から視線を外した。
とりあえず2人でバス停に向かい、バスに乗り込むと、空いている椅子に座った。
お互いもう付き合っている人はいないのに、元の様に戻れない俺ら。
寝ていないくせに、起きてるくせに、優衣は『話しかけるな』とばかりに寝たフリを決めこんでいた。
優衣が俺との間に作った壁を退かそうとしないのは、やっぱり俺を赦せないからじゃないか?
『優衣も俺に気がある』というのは、優奈さんの誤想なんじゃないか。
目を閉じたままの優衣の顔を眺めながら色々考えていると、優衣の寝顔越しの窓から学校が見えてきた。
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