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優衣はバスが学校前に到着すると、俺が起こす前に目を開き、すくっと立ち上がった。
やっぱり狸寝入りだった。だって優衣は、1度寝たら結構デカイ音や揺れでも起きない女だから。
優衣に手を貸し、バスから降ろそうとするも、『大丈夫』と優衣は俺の手を取る事なく、手すりに捕まりながらバスを出た。
無言の優衣の隣を、俺も黙って歩く。
校門を抜けて、生徒玄関で靴を履き替え、教室に着くとそれぞれの席に座った。
晃は既に教室にいた。
自分の席でスマホを弄っている晃は、優衣が来た事に気付いているだろうけど、優衣の席に行こうとはしない。
優衣と晃の様子や、優衣の泣き腫らした顔を見て悟ったのか、昨日優衣から晃と別れた事を聞いていて知っていたのかは分からないけれど、優衣の女友達は、優衣に近づくと優しく優衣の頭を撫でては、その話には触れずに全く違う話で談笑していた。
でも、優衣だけはあまり上手に笑えてなくて。
そんな様子を、俺はただ頬杖をついて見ていた。
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