舗装路。

7/21

426人が本棚に入れています
本棚に追加
/164ページ
 「…御無沙汰してます。夕食時にすみません。すぐお暇するので、ちょっとだけお話いいですか?」  俺のお伺いに、  「…何?」  優衣のお母さんは曇らせた表情を更に拉げると、エプロンで手を拭きながらキッチンから出て来た。  「とりあえず、ソファーに座ろうか」  優衣のお父さんが、優衣のお母さんの背中を押しながらソファーに誘導し『優衣たちもおいで』と、俺らを手招きした。  でも、優奈さんはダイニングチェアーに腰を掛け、リビングには来ようとしなかった。  優衣の両親と俺らが、テーブルを挟んで向かい合って座る。  「…あの「私、律と付き合う事にした」  話し出そうとした時、被せる様に優衣が本題を口にした。  「…え。だって…」  まだ俺と優奈さんが付き合っていると思っている優衣の両親が、揃って優奈さんの方を見る。  でも優奈さんは、ただこっちの様子を見ているだけで何も喋ろうとはしない。  「私が、律に『付き合って欲しい』って駄々捏ねた。お姉ちゃんに『律をちょうだい』ってしつこく強請った。散々お姉ちゃんを悪者扱いしておいて、実は悪人は私の方だったんだよ。ずっと騙しててごめんなさい」  驚く優衣の両親に、突然事前打ち合わせなしの作り話をしては、頭を下げる優衣。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

426人が本棚に入れています
本棚に追加