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「…え。」
『彼氏、違くね?』とばかりに困惑する千夏さん。
「あ…お見舞いに来てくれてた人とは、お別れしちゃいました」
きまりが悪そうに答える優衣。
「そ…そっかそっか。いいんだよ!! 若いんだから、そのくらい回転速くて全然いいんだよ!!」
千夏さんが優衣の肩をバシバシ叩いた。
「そんな、とっかえひっかえみたいに言わないで下さいよ!! 今度は別れませんから!!」
若干失礼な千夏さんに、優衣が鼻息を荒げた。のが、だいぶ嬉しい。
「高校の頃、私もそう思ってたー。『この恋、永遠』とか思ってさ、FOREVERだのETERNALLYだの掘られた指輪、薬指にはめてみたりさー。当時付き合ってた彼氏と別れるなんて、思いもしなかったもん。それが、まぁ随分短い永遠だったわ」
細い目をしながら、どこを見ているか分からない遠くの方に視線をやって当時を回想しながら、千夏さんの失礼発言は続く。
「イヤイヤイヤ。16年も一緒にいて、それでも好きで付き合ってるのに、別れる方が難しいっす」
若干イラっとしつつも、千夏さんに言い返すと、
「いいなぁ。『本物』ってヤツだ。羨ましいなー。もともと幼なじみだったんだよね? 優衣ちゃんと律くんは。幼なじみが異性って、憧れるよー。私、幼なじみ女だもん。恋愛しようがなかった」
『私もそんな恋をしてみたかったなー』と千夏さんが溜息を吐いた。
千夏さんが俺らの事を『本物』って言ってくれた事により、千夏さんへの苛立ちは消滅。
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