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「と言う事で、優衣と2人で登校したいので、律はもう少し家で待機してて下さいな。親友の恋路を邪魔しちゃイカンぞ。…てゆーか、優衣がまだ律に会うの嫌らしくてさ。お姉さんに会うのも辛いみたいで、退院するの嫌がってたくらいでさ。優衣が来る前に家に戻ってくれないか」
『優衣の事は俺に任せて』と、晃がエレベーターの上りのボタンを押して、俺を家に戻る様促した。
優衣はまだ、俺や優奈さんを赦せないでいるんだ。
肩を落としてエレベーターを待っていると、下ってきた隣のエレベーターの扉が開いた。
ふと目をやると、松葉杖をついた優衣が出てきて、目が合った。
「…おはよう」
咄嗟に笑顔を取り繕った優衣が、俺に挨拶をした。
長年一緒にいたんだ。優衣の作り笑顔なんてすぐ分かる。だって、優衣は大口開けて笑うか、左右に口端を引っ張ってニヤける様な笑い方をする奴で、こんな『うふふ』的な笑顔はしない。
「…おはよう。…ねぇ優衣「ゴメン。バス乗り遅れちゃうから」
仲直りしたくて優衣に話しかけるも、かわされた。
松葉杖を必死に動かし、逃げる様に晃の元へ行く優衣。
怪我をした優衣を支えるのが、どうして俺じゃなくて晃なんだろう。
優衣と一緒に学校に行くのが、どうして俺じゃないの?
ずっとずっと俺の役目だったのに。
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