平行線。

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 ---------2時間目の化学は移動教室だった。  優衣の彼氏らしく、晃は優衣と一緒に移動しようとしたのだけれど、トイレに行きたかった優衣は『後で行く。ひとりで大丈夫』と晃を先に行かせた。  『間に合うのかよ』などと気掛かりではあったが、心配するのは俺の役割じゃないんだと思い直し、優衣に構うことなく理科室へ。  優衣は、2時間目が始まるチャイムが鳴っても理科室に来なかった。  心配した晃が、机の下でLINEメッセージを打ち出した。  何やってんだよ。彼氏だろうが。探しに行けよ。  立ち上がろうとしない晃にイラついて、代わりに俺が探しに行こうと机に手をついた時、  「遅れてすみません!!」  理科室の扉が開き、教科書と筆記用具を持ちながら、動かし辛そうに松葉杖を操る優衣が入って来た。
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