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「優衣のお母さんが怒るのは当然だよ。…優衣、ゴメン。本当にゴメン。あの日、優衣からの電話切ってしまって…。赦して、優衣。優衣と仲直りがしたい。前みたいに、一緒にゲームしたりコンビ二行ったりしたいよ」
俯く優衣より低く頭を下げ、必死に懇願。
優衣が『頭なんか下げないでよ』と俺の肩を『ポンポン』と叩いた。
「謝らないでよ。律は何も悪くないじゃん。誰も悪くない。…本当は分かってるんだよ。ちゃんと分かってる。自分が悪いって事。
あの日ね、律とお姉ちゃんに差し入れしようと思って、コンビ二に寄ってから帰ってたの。でもさ、その差し入れ自体が余計だったわけじゃん。もしあの日事故に遭わなかったとしたら、私はその差し入れを持って、律とお姉ちゃんの仲を邪魔をしに行く事になっていたわけだし。私が余計な事をしないで、真っ直ぐ家に帰っていたら、風に煽られて事故る事もなかったし、みんなが嫌な思いをしなくて済んだ。全部、私が悪い」
少しだけ顔を上げると、悔しそうに悲しそうに目に涙を滲ませる優衣の顔が見えた。
…知らなかった。優衣が差し入れを用意してくれていた事。
俺は、優衣の助けを呼ぶ声ばかりではなく、善意の優しささえも踏みつけにしたんだ。
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