行き止まり。

9/16
前へ
/164ページ
次へ
 「幼稚園児じゃないんだっつーの」  独り言を呟いては、『ふッ』と小さく笑う優衣。  「優衣、本当にひとりで大丈夫?」  晃が居なくなった隙に、優衣に近づく。  万が一、ひとりで大丈夫じゃなかったとしても、優衣が俺に寄りかかる事はない。  分かっている。でも、俺だって優衣が心配だし、心配をしている事を理由に優衣に話掛けたかった。  「全然大丈夫。律も急ぎなよ。練習に遅れるでしょうが」  やっぱり俺にもたれ掛かったりしようとしない優衣は、俺の事も『早くグラウンドに行け』と急かす。   「残念だったな、優衣。優衣も球技大会出たかっただろ。バレーやりたかったんじゃないの?」  だけど、教室を出ることなく、話を続ける。だって今の俺は、何か用事がなければ、理由がなければ、優衣と話が出来ない。  強引に作った理由だけど、優衣と会話をするチャンスが出来たなら、少しでもその時間を引き延ばしたい。
/164ページ

最初のコメントを投稿しよう!

426人が本棚に入れています
本棚に追加