繋がる想い

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「ん、はぁ、っ……ぁ、先輩?」  果てた余韻もそのままに、再び壁に押しつけられる。さっきと同じ、背後からきつく抱きしめられる体勢だ。 「はぁぁ……お前、本当に可愛いな。堪んない。マジ、可愛い」  肩越しに何度もキスを仕掛けられて『可愛い』を連呼され、いい年した男として恥ずかしい気持ちはあるけど、嬉しさもあるから、照れながらキスも賛辞も黙って受け入れる。 「なぁ? こんなに愛しいって思う相手がいるんだぞ? なのに、ふられた女をいつまでも追いかけてるはずがないだろう?」  ただ、しかめっ面で覗き込んできて、そんなこと言われても返答に困る。  こっちは、往来で抱き合ってる現場を見せられたし。その後、ふたり揃って俺の店で仲良くケーキ選んでたし。誤解しても仕方ないと思う。  土曜の夜、俺が見かけた先輩と女性の抱擁の理由。それは――。 「もう何とも思ってない相手でも、パニック状態で泣いてれば、ああする以外、方法がなかった。その現場をお前に見られてたなんて知らなかったしな」  女性が往診に出かけた先で、患者さんが突然倒れたらしい。言われてみれば、あそこは病院の前だった。  救急搬送したと連絡がきて先輩が駆けつけたら、女性はショックで混乱して泣きじゃくるだけで、まともに話せる精神状態じゃなかったんだそうだ。  患者さんは持病のある人だったけど、検査入院だけで退院出来たらしく、その人へのお見舞いに俺のケーキを買いにきてくれた、というのが、ふたり揃っての来店の理由らしい。  俺のケーキをお見舞い品に選んでくれたのは嬉しいけど、色々とタイミングが悪すぎだったようだ。  タイミングといえば、先輩たちを見て叫んだ優里ちゃんを慌てて制止してた俺の姿も、逆に見られてたらしい。  『抱き合うようにしてたお前らのこと、気になって、気になって。ひと晩中、悶々として眠れなかった。寝不足のまま、朝早くから馬鹿みたいに焦ってパティスリーに駆けつけてたよ』と言われた。  俺だって、飲めないワインを煽って無駄に二日酔いとかしちゃったし、ほんとに俺たちって……。 「何、考えてる?」 「んあっ!」 「余裕だな。俺は可愛い恋人にヤラレて余裕皆無なのに、お前は余裕あるの? なら、まだまだつき合ってくれよ」 「あっ……よゆー、なんてっ」  ないっ!  ずっと後ろから突き上げられてて、もう立ってるのも限界。  シャワーブースの壁、ツルツルした素材だから、両手を突っ張って支えにしようにも、湿気で滑るし!  『何、考えてる?』って尋ねられた時なんか、挿入しやすいように持ち上げられてた片足がさらに広げられたから、最奥まで深く抉られてて。腰も膝もガクガクなんだよっ。 「あぁ、そうだ。そろそろ一般のお客様も入ってくる時間だし。もしここに入ってきたら、声、抑えろよ」 「えっ? お客って……んっ!」 「こんな風に俺がキスで塞いでおいてやるから、思いっきり喘いでも構わないけどな」 「やっ、人が居るのに、そんなこと出来るわけないですっ」 「大丈夫、大丈夫。そのためにシャワーを出しっ放しにしてるだろ? 人が使ってるところに誰も入ってこないよ」  絶対、嘘だ。大丈夫なわけない。  シャワーブースのドアは、下の部分が開いてる造りだ。そこからは、中に人が居るかどうか、ひと目でわかる。  今、俺たちは二名でひとつのブースを使ってるから、外からは男ふたりの足が丸見え! ブースに入ってくることはないにしても、中で何してるかなんてバレバレじゃないか! 「ああぁぁっ! 先輩の馬鹿ぁっ!」 「おまっ! 罵って暴れるのと、喘いで締めつけるのを同時にすんなっ!」
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