あいつ

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あいつ

海に行った3日後。 仕事帰りに俺はあいつに会った。 「よぉ、久しぶりだな、豊永」 「え?えーと、えーとだ、れですか?」 「ほらな!お前、絶対忘れてると思った。 古賀だよ、古賀岳(こががく)」 「古賀?古賀・・・」 「なんでわかんねーんだよ!! 中学のとき喧嘩しただろうが!!」 「あ!古賀か!!」 「やっと思い出したか」 中学のとき、俺はヤンキーというものだった。 学校のヤンキー共をまとめる番長みたいな者で、 よく他中のやつと喧嘩しては勝利を収めるたのだった。 隣の町の中学に通う古賀も番長でよく俺の住んでた町にきて俺らに喧嘩をふっかけてきたものだ。 まぁいつも俺らが勝ってたが。 「久しぶりだな、古賀。お前今なにしてんだ? まさかまだ喧嘩とかしてんのか?俺ら24だぞ」   「っなことしてねーよ!今は会社で働いてる」 「そーなのか。あ、俺今な、調理師として」 「知ってる、昼、その店で喰った」   「よく知ってたな、仕事先」 「ってか俺は昔話をするために来たんじゃねー」 「なら何しに来たんだよ」 「はは、脅しにだよ」 「脅し?」 「お前、あの佐伯って奴のことが好きなんだろ?」 「・・・よく覚えるな。洸のこと」 「まぁ、高校の頃、お前に喧嘩ふっかけにいったらあいつが傍にいて止めてたからな。 お前が不良やめたのもあいつが原因だろ?」 「・・・」 「3日前、電車でお前が佐伯にコクってたところ見てな。ほら」 古賀は自分のスマホを見せた。 俺が洸の額にキスしてる写真だ。    油断した。 誰もいなかったから。 「何をする気だ?」 「これを佐伯に見せる。 さぞビックリするだろうな。」 「はぁー、わかった。 俺はなにをすればいい。」 脅しにきたってこと俺が奴のいうことを聞けば言わないってことだろう。 ならそれに従うまでだ。 洸に嫌われるくらいならこいつの言うこと聞くほうがましだと思う。 どうせ下僕になれとか殴られろとかいうに決まってるから。 なら好きにやらせばいい。 こいつは俺に復讐したいんだろうからな。 「物わかりいいじゃねーか。なら俺と付き合え」 「はぁ?!」
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