0人が本棚に入れています
本棚に追加
今年のお盆、俺は帰省しない。
それには理由がある。
「彼女」がいないから。
今年の冬、俺は大事な小梅を失った。
後部座席のシートを倒し、そこへ古シーツを敷き、小梅のための広々としたスペースをつくってやる。
そうすると小梅は喜んで車に飛び乗り、俺の実家までの片道4時間を、彼女なりに快適に過ごしてくれていたと思う。
小梅は俺の実家に着くと、さすがに疲れて眠っていたけれど、母ちゃんがひと言「ごはん」と声をかけた途端、ビクッと身体を震わせて飛び起き、俺が持ってきた愛用の皿に首を突っ込んで勢いよく食べていた。
実家でも小梅は大人気だった。
両親も妹も犬が大好きだから、小梅の方もすぐにそれを察知して、はじめて連れていったときから、あっという間にみんなと仲良くなれた。
ああ、でも、ぜんぶ思い出になってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!