失いしもの

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 今年のお盆、俺は帰省しない。  それには理由がある。 「彼女」がいないから。  今年の冬、俺は大事な小梅を失った。  後部座席のシートを倒し、そこへ古シーツを敷き、小梅のための広々としたスペースをつくってやる。  そうすると小梅は喜んで車に飛び乗り、俺の実家までの片道4時間を、彼女なりに快適に過ごしてくれていたと思う。  小梅は俺の実家に着くと、さすがに疲れて眠っていたけれど、母ちゃんがひと言「ごはん」と声をかけた途端、ビクッと身体を震わせて飛び起き、俺が持ってきた愛用の皿に首を突っ込んで勢いよく食べていた。  実家でも小梅は大人気だった。  両親も妹も犬が大好きだから、小梅の方もすぐにそれを察知して、はじめて連れていったときから、あっという間にみんなと仲良くなれた。  ああ、でも、ぜんぶ思い出になってしまった。
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