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花が咲き乱れ、よく手入れされた樹木が品よく並び、艶々に磨かれた大理石のガーデンテーブルが置かれたこの庭園には、二つのカエルの物語があった。
一つは魔女に呪われてカエルになった王子を、姫が愛のキスで救った話。
一つは人間の女性を愛したカエルの話。
今もまた、美しい少女が、ヒキガエルを前にアフタヌーンティーを嗜んでいる。
彼女は愛を込めたキスをすることが出来るのか。
カエルとキスしなければ花嫁になることが出来ない姫君。
カエルで試さなくては花嫁を迎えることが出来ない王子。
1度は真実の愛にして結ばれたはずの王室は、いつから虚構と成り果てたのか。
愛とは形や行為ではないことを、人はすでに知っているだろう。
麗しく、溢れるほどの富こそなけれど、豊かで平和に満ちたこの国に、唯一古くから残る歪な慣習。
あの時、王子を救った姫の愛を思い、あの時、潰されたカエルの心を思い、私は憂う。
だから、旅に出た。
物語の本を閉じるように。
完
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