フキの下

4/5
前へ
/21ページ
次へ
一方カエルはと言うと、彼女に同調するように動かなかった。 愛しい者を眺める幸せと、一歩でも動いてしまえば壊れる儚さの間で、一日でも長くそうしていたいと思っていた。 もし、自分が毎朝餌をもって現れる皇太子であったなら、彼女を選びはしないだろう。 彼女は国を幸せにはしない。 だが、カエルはただのカエルだった。 彼女の美しさに心を奪われてしまった、弱い生き物だ。 守るものなどない。 ただの人間だったなら、彼女を奪って逃げるのに。 いや、彼女が同じヒキガエルだったなら……。 彼女は例えヒキガエルになったとしても、変わらず美しいだろう。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加