歩み

2/6
前へ
/21ページ
次へ
この一人と一匹が初めて出会った日から、何回の逢瀬を交わした頃だろうか。 もう、何日も同じことの繰返しで、そこにいる誰もが飽き飽きしていた。 当の一人と一匹を除いては。 とは言え、この関係は時限がある。 王室も皇太子も人の子であるからして、神のようにその時を待つことは出来ないのである。 それは、期限の数日前になるだろうか。 いつものように少女は大理石のガーデンテーブルにつき、ヒキガエルはフキの下に隠れていた。 空は灰色の曇天、カエルが瞬きの回数を減らすほど、辺りの空気は水を含んでいた。 水が盛り上がるほど満たされたコップがあり、あと一滴で溢れてしまうような、そんな天気だ。 カエルは空気と自分の境がわからなくなる錯覚を覚えていた。 だからか、彼女が拳を弛めたその瞬間をより早く感じていた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加