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穏やかな午後、趣向を凝らした庭園で彼女は頭上の青空が首を傾げるほどに、不機嫌だった。
季節はもうすぐ初夏である。
まだ湿り気を知らない春の残り香が、彼女の首もとをすぅっと撫でていく。
風に弄ばれた髪が、陽光に晒されては輝いた。
彼女は侍女たちに無理矢理着飾らされたドレスを掴み、薄く紅をひかれた唇を空しく噛み締めていた。
侍女の差しかける日傘のもと、白い大理石で出来たガーデンテーブルにつき、用意された茶や色とりどりの菓子にも手をつけない。
しかし、そこから動かないのは、ある時間までそこで過ごすことが彼女の仕事だからだ。
それが、フキの下にいるヒキガエルの為の時間だった。
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