フキの下

2/5
前へ
/21ページ
次へ
その日もヒキガエルはフキの下にいた。 彼女がそこへ現れる数分前、のったりべったり重たい体を地面に打ち付けながら、指定席のそこへ陣を取る。 やがて侍女たちに連れ添われ、彼女もまたいつもの場所へ腰掛けた。 彼女はカエルがそこの大きな葉の下にいることも、知っている。 それが薄暗い日陰のなかから、ギョロギョロとしたゼリー状の眼で自分を凝視していることも、気付いていた。 時折、喉袋を大きく膨らませて、酔っ払いのゲップのような品のない音を出している。 気持ち悪い。 いつも、彼女の中にはその一言があった。 震えてしまう両手を堪えるために、ドレスのスカートを握りしめる。 だから、立ち上がるときには生地が皺だらけだ。 口を開けると心に納めた一言が飛び出そうで、大好きなアフタヌーンティーには手をつけない。 いつ、あのカエルが眼前に飛び乗ってくるのか、恐怖におののいていた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加