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その日もヒキガエルはフキの下にいた。
彼女がそこへ現れる数分前、のったりべったり重たい体を地面に打ち付けながら、指定席のそこへ陣を取る。
やがて侍女たちに連れ添われ、彼女もまたいつもの場所へ腰掛けた。
彼女はカエルがそこの大きな葉の下にいることも、知っている。
それが薄暗い日陰のなかから、ギョロギョロとしたゼリー状の眼で自分を凝視していることも、気付いていた。
時折、喉袋を大きく膨らませて、酔っ払いのゲップのような品のない音を出している。
気持ち悪い。
いつも、彼女の中にはその一言があった。
震えてしまう両手を堪えるために、ドレスのスカートを握りしめる。
だから、立ち上がるときには生地が皺だらけだ。
口を開けると心に納めた一言が飛び出そうで、大好きなアフタヌーンティーには手をつけない。
いつ、あのカエルが眼前に飛び乗ってくるのか、恐怖におののいていた。
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